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心理学ワールド 77号 小特集 学生相談から見た大学生の変化 岩田 淳子(成蹊大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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23 小特集 変わる学生,変わる大学  学生相談とは,大学教職員が学 生に対して行う学生支援の中の専 門的機能の一つであり,臨床心理 学やカウンセリングの理論を学 び,対人援助のトレーニングを受 けた専門家(多くは臨床心理士) が行う心理教育的実践である。今 日の学生相談の活動内容は学生に 対する個別カウンセリングに限ら ない。教職員や学生の家族に助言 を行うコンサルテーション,学生 の成長発達の促進,問題を未然に 防止するための心理教育プログラ ムの提供。さらには,学生が関与 する事件や事故への危機介入と心 理的ケア,ハラスメント相談など に携わる機会も少なくない。  本稿では,日本学生相談学会が 3年ごとに実施している全国の大 学・短期大学・高等専門学校を対 象とした学生相談機関に関する調 査(以下,全国調査)のなかの学 生相談機関の利用実態についての 統計から学生相談の現状を紹介す るとともに,大学生に関するさま ざまなデータを照らし合わせなが ら,「学生相談カウンセラーから 見た大学生の変化」について私見 を述べたい。 全国調査からみる学生相談   直 近 の 全 国 調 査( 岩 田 ら, 2016)によると学生相談機関(大 学)の年間来談学生実数の平均 は158.6人,来談学生延べ数の平 均は1007.8人で,過去調査(2009 年,114.5人/608.3人 ) と 比 較 す ると増加傾向が続いている。相 談内容は,勉学・進路(26.4%), 心 理・ 適 応(57.0%), そ の 他 (15.5%)である。増加している相 談内容の回答を求めると発達障害 学生支援の相談(67.4%),対人関 係(52.3%), 精 神 疾 患(47.2%) の順であった。また,援助活動内 容では,教職員や家族へのコン サルテーションを88.1%の大学で 行っている他,療学援助(主に 精神障害学生に対して行う生活 臨床的援助)は62.5%,危機介入 は54.6%,居場所による援助活動 は42.5%の大学で行っている。以 上の調査結果から,学生相談を利 用する学生は増加しているととも に,教職員や家族も学生について の心配ごとを多く抱えていること がわかる。学生の指導にあたって 困惑するという事態は,どの教 職員にも生じうることなのであ る。発達障害については「学生相 談カウンセラーにとってごく身近 な概念になり,今や不適応学生を 見立てる際の支柱になっていると 言っても過言ではない」(坂本, 2014)。また,精神疾患のある大 学生の相談の増加も注目できる。 かつては,精神疾患のある学生は 治療を最優先に「休学」を勧める ことが多かった。しかし,日本学 生支援機構による「障害のある学 生の修学に関する実態調査」にお いて平成27年度から設問項目に 「精神障害」が加えられたことを 考え併せると,精神科的治療を継 続しながらも学修を支援していく 方向性にシフトしている現況が見 えてくる。障害学生支援が活発に 行われるなかで,精神疾患をもつ 学生への修学と支援のあり方が問 われているといえよう。 大学生に関するさまざまなデー タと学生相談  文部科学省資料「大学の入学定 員・入学者数等の推移(平成26 年)」によれば,大学進学率は約 51%,大学収容率も約93%。まさ にユニバーサルアクセス型の大学 (トロウ,2000)への変更を遂げ ている。現役:浪人の比率は8: 1( 平 成4年 で は2:1) で あ り, 学生相談を訪れる学生(以下,来 談学生)のなかの浪人生は一様に 「友人には浪人であることは隠し ている」という。確かに「マイノ リティ」であり,肩身の狭い思い をしているらしい。不本意入学の 悩みは一定数あるものの,かつて のように2浪3浪の学生に会うこ とがめっきり減ったと感じていた が合点がいく。  大学生の経済状況には深刻な 変化が見られる。文部科学省資 料「国公私立大学の授業料等の推 移」によれば,大学における授業 料の長期推移は右肩上がり,平 成26年の私立大学授業料平均は

学生相談から見た大学生の変化

成蹊大学文学部 教授

岩田淳子

(いわた あつこ) Profile─岩田淳子 青山学院大学大学院文学研究科修了。2014年より現職。日本学生相談学会理事,東 京臨床心理士会理事。専門は臨床心理学。著書は『学生相談と発達障害』(共編著, 学苑社),『発達障害のある大学生への支援』(分担執筆,金子書房)など。

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24 出や関係性のあり方に変化をもた らさないとは到底思えない。 世相を反映する学生相談  20年以上,日々学生とのカウ ンセリングを続けている実感とし ては,大学生の悩み事や問題は時 代によらずに変わらない部分があ る。しかし,データからは,社会, 大学,大学生の変化が見て取れ, 虐待,留学生,セクシュアルマイ ノリティなど時代のトピックもま た日々の相談に現れる。複雑で困 難な相談が増えていると言われて 久しいが,いつの時代であって も,いかなる大学生であっても, 門戸は広く,学生との関係性は深 くありたいものである。 謝辞 大学生に関するさまざまな データは,第50回全国学生相談研 究会議におけるシンポジウム「現代 の大学生像について考える」におい て発表された中島正雄先生(東北大 学)から提供していただいた。感謝 申し上げます。 文 献 ベネッセ教育総合研究所「第2回, 大 学 生 の 学 習・ 生 活 実 態 調 査 報 告 書 」 http://berd.benesse. jp/koutou/research/detail1. php?id=3159 藤 村 正 之・ 浅 野 智 彦・ 羽 渕 一 代 (2016)『現代若者の幸福:不安感 社会を生きる』恒星社厚生閣 岩田淳子・林潤一郎・佐藤潤・奥野 光(2016)2015年度学生相談機関 に関する調査報告.『学生相談研 究』 36 , 209-262. 小柳晴生(1996)大学生の不登校. 『こころの科学』 69 , 33-38. マーチン・トロウ/喜多村和之(編 訳)(2000)『高度情報社会の大学: マスからユニバーサルへ』玉川大 学出版部 坂本憲治(2014)学生相談における 発達障害者支援の研究動向と課 題.『学生相談研究』 35 , 154-165. 864,384円と昭和50年と比較する と5倍近い。ひと月あたりの生活 費(仕送り額から家賃を除く)は 25,500円(2015年 度 ),1日 あ た りの生活費に換算すると850円で あり,最高時1990年度の2,460円 のほぼ3分の1である(東京私大 教連ホームページ「私立大学新 入生の家計負担調査2015年度」)。 さらにJASSOの奨学生数および その割合の推移によると,奨学生 数は学生数の38.2%,2.6人に1人 が奨学生である。つまり学費は上 がり,生活費は下がり,奨学金利 用者は大幅に増加している。今の 大学生の多くが大学卒業と同時に 多額の奨学金返済を抱えているの だ。従って来談学生の主たる相談 内容が経済問題でないとしても, 特に留年や休学が検討される相談 のなかでカウンセラーにとって学 費の出所は押さえておくべき事項 となっている。文脈を外れるが, 大学生の不登校について「生き方 の変更という作業」であり「その ためには安全な場所と時間が必要 である」との一昔前の論(小柳, 1996)は否定しないまでも,経済 面を勘案すれば,そう悠長に構え てはいられない。  大学生の対人関係についても変 化が見える。ベネッセ教育総合研 究所「第2回,大学生の学習・生 活実態調査報告書(2012年)」で は,話をしたり一緒に遊んだりす る友だちが学内外ともに「いな い」と回答した割合が2.5%,悩 み事を相談できる友だちが学内 外ともに「いない」と回答した 割 合 が10.8%で あ っ た。 藤 村 ら (2016)の継続的調査データから 友人関係について表のような結果 もあり,友人関係に関する不安の 高さ,友人の選択化,1人の居や すさなどの傾向が見られる。来談 学生から語られる友人関係は周囲 の反応を過剰に気にし,集団のな かで「浮く」ことの怖さに絶えず 苛まれているかのように見える。  インターネットやSNSの利用 状況を示す調査は多く,大学生 (調査により広く若者層も含む) のテレビ視聴時間は若干短くな り,インターネット利用時間は大 幅に増加している。スマートフォ ンの急速な普及により,大学生の SNSの登録率は高く,社会人より 利用時間も長い(たとえばコロプ ラ「若者ヒマ意識調査」などを参 照)。来談学生の語るエピソード に出てくる会話はほぼSNS上で 行われており,実際に会って話し ていると思って学生の話を聞いて いては理解がずれる。「いいね」, ツイート,スタンプでのコミュニ ケーションが,学生の気持ちの表 表 友人関係に関する来談学生の傾向(藤村ら,2016 より) 2002年 2012年 全体(n) ①友達をたくさんつくるように心がけている 52.3% 43.6% 2135 ②初対面の人とでもすぐに友達になる 50.2% 47.2% 2136 ③友達との関係はあっさりしていて,お互い に深入りしない 53.7% 48.5% 2128 ④友達と意見が合わなかったときには,納得 がいくまで話し合いをする 50.2% 36.3% 2133 ⑤遊ぶ状況によって一緒に遊ぶ友達を使い分 けている 65.9% 70.3% 2127 ⑥いつも友達と連絡をとっていないと不安に なる 80.9% 84.6% 2133 ⑦友達といるより,ひとりでいるほうが気持 ちが落ち着く 46.0% 71.1% 2135

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